戸建て売却で「査定額はどこに頼んでも同じだろう」と思っていませんか。私が宅建士として関わった築18年の戸建て案件では、5社の査定額に最大198万円の差が生じました。この差を生んだ構造と、売主が取るべき行動を実務視点で解説します。媒介契約の選び方から内覧対応まで、具体的な数字とともにお伝えします。
戸建て売却の基本ステップと全体像
売却開始から引き渡しまでの流れを把握する
戸建て売却は大きく「査定→媒介契約締結→販売活動→売買契約→引き渡し」という5段階で進みます。一般的に、販売開始から成約までの期間は3〜6か月程度とされており(国土交通省の不動産取引情報をもとにした市場統計を参照)、この期間を短縮できるかどうかが手取り額に直結します。
私がAFP・宅建士として複数の不動産案件に関わる中で実感しているのは、「どの段階で何を決断するか」が売却価格を左右するという点です。特に、最初の査定依頼の段階で1社だけに絞ってしまうと、比較軸がなくなり価格交渉力を失います。
売却を決めた時点でまず行うべきは、複数社への査定依頼です。最低でも3社、可能なら5社程度に依頼することで市場価格の幅を把握できます。この「幅の把握」が後述する198万円差の検証でも重要な役割を果たしています。
売却相場を正しく読むための基礎知識
戸建ての売却相場は、立地・築年数・延床面積・土地の形状・最寄り駅からの距離などの要因で変動します。特に築18年前後の物件は、新築プレミアムが完全に剥落した後の価格帯に入るため、査定会社によって評価の差が出やすい年代です。
国土交通省の土地総合情報システムや、不動産流通機構(REINS)が公表する成約データを使えば、エリア別・築年数別の売却相場をある程度確認できます。ただし、あくまで参考値であり、個別物件の最終的な売却価格は市場の需給状況によって変わります。専門家への確認を推奨します。
私自身、浅草エリアで民泊事業を運営する中で周辺の不動産市況を継続的に追いかけています。2023〜2025年にかけて東京東部の戸建て相場は緩やかな上昇傾向にあり、インバウンド需要の回復が一定の影響を与えていると感じています。こうした地域固有の動向は、机上査定だけでは見えてきません。
築18年戸建て5社査定の実体験レポート
5社に査定を依頼した経緯と結果の概要
これは私が宅建士として関与した案件の話です。東京都内、築18年の木造2階建て、延床面積約95㎡、最寄り駅から徒歩12分の物件を売却しようとしたケースで、売主の方(40代・会社員)から相談を受けたのは2024年春のことでした。
「1社だけ査定を受けて決めようとしていた」という売主に対して、私は「必ず複数社に依頼してください」と強くお伝えしました。結果として5社に査定を依頼し、出てきた査定額は次のような分布になりました。A社:3,280万円、B社:3,180万円、C社:3,120万円、D社:3,095万円、E社:3,082万円。最高値と最低値の差は198万円です。
この差を「誤差の範囲」と捉える人もいますが、売主の手取りに直結する話です。仲介手数料や諸費用を考慮しても、198万円の差は軽視できません。「最初に1社だけ相談していたら、E社に決めていたかもしれない」と売主は振り返っていました。
査定額の差を生んだ物件固有の要因
5社の査定額に差が出た直接的な理由は、築18年という年代における「残存価値の評価方法の違い」にあります。木造住宅の法定耐用年数は22年とされており、築18年の物件は残存耐用年数が4年という計算になります。ただし、実際の市場では「物理的な残存価値」よりも「周辺の成約事例との比較」が優先されることが多く、査定会社によってどちらに重みを置くかが異なります。
また、この物件には2015年にキッチンとバスルームのリフォームが施されていました。リフォーム履歴を「付加価値」として評価したA社は査定額が高く、逆に「築年数ベースで机上計算した」E社は低い査定額を出していました。同じ物件でも、担当者の評価軸や会社の査定方針によって大きな差が生まれます。
私が宅建士として感じたのは、「査定額は予測値であって保証値ではない」という当然の事実を、売主が忘れがちだという点です。高い査定額を出した会社が良い会社とは限らず、根拠のある査定額かどうかを見極める目が求められます。
198万円差が出た理由を4つの視点で分析する
査定方法の違いが価格に与える影響
不動産査定には大きく「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。机上査定は物件情報をもとにデータで算出するため、スピードは早い反面、物件固有の状態(リフォーム履歴、日当たり、管理状態など)が反映されにくい傾向があります。一方、訪問査定は担当者が現地を見るため、より実態に近い数字が出やすいです。
今回の5社査定でも、訪問査定を行ったA社・B社の査定額が上位2社を占めていました。机上のみで完結させたD社・E社は下位に集中しています。この傾向は偶然ではなく、リフォーム済みで状態の良い物件ほど訪問査定で高く評価される構造が背景にあります。
担当者の実績と営業方針の差異
査定額の差には、会社の規模だけでなく「担当者が直近でどのエリアの物件を何件成約させているか」も関係します。今回の案件では、A社の担当者が「同じ沿線で築20年以内の戸建てを過去1年間に8件成約させた実績がある」と具体的に説明してくれました。
この「担当者の成約実績」は、査定書には記載されない情報です。査定額の根拠を口頭でどこまで説明できるか、過去の成約事例を具体的に提示できるかどうかを確認することで、査定会社の実力が見えてきます。私は宅建士として、査定時には担当者に対して「直近半年の同エリアの成約事例を教えてください」と必ず確認するよう売主にアドバイスしています。
詳しい査定会社の選び方については 一戸建て売却|築22年7社査定で295万円差を検証した2026年体験 もご参照ください。
媒介契約の選び方と実際の判断プロセス
3種類の媒介契約の特徴と使い分け
媒介契約には「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」「一般媒介契約」の3種類があります。専属専任は1社のみに依頼し、自分で買主を見つけることもできない形態。専任は1社のみだが自己発見取引は可能。一般は複数社に同時依頼できる形態です。
それぞれにメリット・デメリットがあります。一般媒介は窓口が広い反面、各社が「他社に先を越される」という意識から積極的に動かないケースがあります。専属専任や専任は会社にとって独占案件なので、広告費をかけて動くインセンティブが働きます。ただし、1社に依存するリスクもあるため、担当者の信頼性が判断の軸になります。
私が保険代理店時代に相談を受けた経営者の方が、戸建て売却で一般媒介を選んだにもかかわらず、どの会社も積極的に動かず3か月間で内覧ゼロという状況に陥ったことがあります。媒介契約の形態を軽く考えると、時間と機会を損失する可能性があります。
今回の案件で専任媒介を選んだ根拠
先ほどの築18年の案件では、最終的に「専任媒介契約」を選択しました。理由は3つです。第一に、A社の担当者が同エリアの成約実績を具体的に示せたこと。第二に、査定額の根拠説明が論理的で、相場観が現実的だったこと。第三に、REINS(不動産流通機構のデータベース)への登録と定期報告義務が専任媒介では法的に義務付けられており、活動の透明性を担保できること。
一般媒介を選ばなかった理由は、複数社に依頼すると「どの会社も本気にならない」リスクが現実的だったからです。特に築18年という年代は「少し手を入れれば売れる」とも「古すぎて売りにくい」とも判断されうる微妙な年代であり、担当者のモチベーションと営業力が成約スピードに直結します。
媒介契約の詳細な比較については 土地売却の実体験|宅建士が5社査定340万円差を検証 もあわせて確認してください。
戸建て売却を有利にする実践術と最終まとめ
査定額・売却価格を引き上げる5つのポイント
- 複数社査定は必須:最低3社、できれば5社に依頼して価格の幅を把握する。1社だけでは比較軸がなく、価格交渉の余地を失う。
- 訪問査定を必ず受ける:机上査定だけで決定しない。リフォーム履歴・管理状態・採光など現地でしか見えない要素が価格に影響する。
- リフォーム・清掃の記録を整える:築18年前後の物件では、設備交換や補修の履歴を書面で提示することで「管理が行き届いている」という印象を与えられる。
- 内覧対応を丁寧に行う:売却価格は査定額ではなく買主との交渉で決まる。内覧時の印象(清潔感・においの有無・収納の見せ方)が成約率に直結する。
- 税金対策を事前に確認する:居住用財産の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条)の適用要件や、売却益が出た場合の譲渡所得税の計算方法は、事前に税理士に相談して把握しておくことを推奨します。個別の税額は物件状況や保有期間によって異なります。
宅建士・AFPとして伝えたいこと、そして次のアクション
私がAFP・宅建士として感じるのは、「戸建て売却は情報戦」だという点です。売主が市場の相場観を持ち、複数社の査定を比較し、媒介契約の選択を戦略的に行えば、同じ物件でも数百万円単位で結果が変わる可能性があります。今回の5社査定198万円差はその象徴的な事例です。
私自身、2026年に東京都内で法人を設立し、浅草エリアでインバウンド向け民泊事業を運営する中で、不動産の取得・運用・売却に関する判断を日常的に行っています。フィリピン・ハワイでの海外不動産取得経験も含めて、「価格は調べた人が得をする」という構造は国内外で変わりません。
戸建て売却を検討しているなら、まず複数社への一括査定から始めることを強くお勧めします。査定は無料で依頼でき、相場観を掴むだけでも大きな価値があります。下記のリンクから査定サービスの詳細を確認してみてください。
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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